「旨味」4原味の混合によってもたらされるものなら、4原味を受け持つ神経繊維のそれぞれになにしかの反応を起こさせながら脳中枢まで伝えられるはずだ、よく実験してみると、グルタミン酸ソダやイノシン酸などの旨味物質は、あきらかに他の4原則とはちがった神 経繊維による反応を起こさせつつほぼ独立に脳まで伝えられることがわかった・そんなわけで 日本人の好きな「旨味」はこんにち、科学的にも席を得ているわけなのだ、どうしたことか、欧米人にとってはこの感覚や、得ようとする努力すっぽりと抜けている。
ただ、有名なブリアサバラソは1825年に出した『味覚の生理学』(邦訳は『美味礼讃』)の中で、「化学の栄養学に対する最大の貢献はオスマソムを発明したことだ」とし、オスマソムとは「冷水中に溶ける獣肉の中の高度に味のある部分」といっている。
冷水に不溶性のエキス分と異なり、「成熟した赤身や黒身の動物から絞られ」子羊や鳥類の白身からはほとんど得られないものだとした。
この「オスマソム」の性質はグルタミン酸などのアミノ酸やイノシン酸を思い起こさせる。
この神秘的な名のものも、その後研究題目となることもなく欧米ではうち捨てられてきた。
旨味、たぶんサバラソのいうオスマソムの本体の1つはっきりしたのは、それから約80年後の明治401年、日本人学者によってだった。
I田菊苗博士が昆布の旨味成分がグルタ味噌酸ソダであることを発見したのである。
いわゆる化学調味料は日本の台所と食卓の必需品となってきた。
大発見は1夜にしてなるものではない。
日本人にはこの発見のために長い「準備期間」あったのだ。
旨味を求める日本人の努力は遠く飛鳥・奈良時代までさかのぼる。
「醤油文化」の項でも述べたように魚介類を適度の塩につけて放置しておくと、肉の自己分解や発酵によってアミノ酸ができて、旨味のある塩汁となる。
こんにち魚醤とよばれて、東南アジアで作られ、用いられている。
日本の「しょつつる」や「いかなご醤油」はその名残だ。
これらはひっくるめて「醤」と名づけられていた。
豆などを発酵させて作るコ豆醤」や「穀醤」が工夫され、味噌の原型に当たるものができた。
奈良時代には十種類ものこうした旨味料が工夫され、奸を競っていた。
これらはすべて塩味をもった旨味料である。
それらは技術の進歩とともに、味噌と醤油に分化していった。
鰹などの煮汁(いろり)や鰹節、干しシイタケなどの旨味専門の調味料も平安時代にはすでに味つけに大いに用いられていた。
また、煮干、だし昆布の使用、グルタミン酸の発見、イノシン酸の使用など、日本人の調理や食生活の歴史とは、いじらしいほどの旨味へのあれこれと、それの発見への努力の歴史だ。
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